自然妊娠の最適条件-妊活中の方必読のノート

スライド1.JPGスライド3.JPGスライド2.JPG今回は、ASRM(アメリカ生殖学会)委員会が出している、どの様な条件が自然妊娠に適しているかに関する勧告を出しているので紹介します。現在、妊活中の方にはこれから妊娠をしようと思っている人にも有用な話なので、是非ご覧ください。

 先ずはFertility and aging(妊娠能力と加齢)についてです。 一般に最初の3か月が、最も妊娠率が高く、妊娠の80%は半年内で妊娠します。妊娠に対する女性年齢の影響:図1(各時代、各民族あるいは集団での、1000人当たりで、1年間に妊娠する数)を見ていただけば、35歳以降の妊娠数は減少し、特に37-8歳からは著明です。男性の加齢への影響:女性よりも小さく、50歳まではあまり問題になりません。つまり女性は35歳、男性は50歳を超えると、妊娠能力が低下すると考えてください。以上より、35歳を超える女性は、半年妊娠しないなら、その時点で専門医に相談するのが望ましいと勧告しています

 精子数に与える、禁欲期間の影響:5日以上の禁欲は、精液状態の悪化を導く。連日射精でさえも、精液状態に悪い影響を与えない。さらに精子の少ない男性では、精子濃度と運動性は連日射精した方が、状態の改善に結びつくという報告もある。精液状態の改善のために、禁欲している人がいますが、これは全くの間違えであることを、認識すべきです

 性交渉の頻度に関して:連日性交渉での1か月あたりの妊娠率は37%、隔日では33%、そして、週1回の頻度では15%になると報告されています。つまり、妊娠するには、出来るだけ性交渉の頻度を上げることが、有効であると言う事です

 次はThe fertile window(妊娠可能な窓:つまり妊娠可能期間の事)に関して

妊娠しやすい時期:排卵の2日前の性交渉が、妊娠率が最も高い日と報告されています。図2は、月経周期のいずれかの日に1回のみ性交渉を行い、どの日の性交渉が、最も妊娠率が高かったかを調べたグラフです。月経がはじまった日から12日目に妊娠率のピークが来ています。一般的な月経周期は28日で、月経から14日目の排卵が多いので、排卵2日前に妊娠率が最も高いと言う話に一致しています。

 月経周期の中で妊娠可能な期間(fertile window):排卵日が妊娠可能最終日となり、その日を含めて手前6日間と言われています。図3を見れば、妊娠率は排卵2日前でピークを示し、排卵5日前まで妊娠可能であることがわかります。また加齢による妊娠率の低下の度合いもグラフからわかります。それによると、30代後半の妊娠率は、20代前半の、ほぼ半分程度になっています。

 以上から排卵日の性交渉が最も妊娠すると考えている方が多いですが、事実は、排卵2日前がピークです。さらに、排卵日の妊娠率は、排卵5日前と同程度しかないという事実も良く理解した方が良いです

 膣分泌物の状況から見た妊娠率(図3):分泌液に粘性が無くなり、また透明の場合には妊娠率は最も高い。頚管粘液は排卵の5~6日前から血中エストロゲンの上昇に伴って増加し、排卵の2~3日以内にピークとなる。粘液が最も多かった日に性交を持った場合、妊娠率は最も高くほぼ38%にも達したと報告されています。頚管粘液は基礎体温と密接に関係し、月経のカレンダーよりも妊娠率のピークの時期を正確に予測することができるという報告もあります。

 排卵予測での尿中LHについて:排卵は尿中LH 陽性後2日以内に認められるが、偽陽性は7%と報告されています。尿中LHのモニタリングは頻回に性交渉を試みないカップルにおいては、妊娠に至るまでの時間を短縮されると思われる(個人的には、タイミングを合わす日が、排卵に近接しすぎるので有効性には疑問です)。

 性交渉後の体位は妊娠に関与するか:性交後仰臥位(あおむけに寝ている体位)のままに留まることが精子の遡上を促すと考えているものもいるが科学的根拠は示されていません。

 性交渉の際の体位は妊娠に関与するか:性交の際の体位は妊孕性に影響を与えるという根拠は示されていません。性交渉の際の体位に関わらず射精後数秒間で精子は頚管粘液の中に認められるようになります。女性のorgasmが精子の移送を促すのではないかとも考えられていますが、orgasmと妊娠率の間の関係はありません。また、性交渉の方法によって児の性別に関係があるとする根拠は示されていません。

 性交渉の際の潤滑剤は妊娠に関与するか:市販の水溶性の潤滑剤は精子の運動性を低下させるが、canola oilにはそのような効果は認められません

 ライフスタイルの妊娠への影響(表1)

本日はDIET AND LIFESTYLE(食事とライフスタイル)の妊娠への影響

 肥満について:妊娠しにくく、妊娠に到達するのに、通常の2倍の時間がかかります(BMI35以上)。るい痩(激やせ)について:肥満と同様で妊娠しにくく、妊娠に到達するのに、通常の4倍の時間がかかります(BMI19以下)。食事療法について:菜食主義、低脂肪食、ビタミン、抗酸化剤、ハーブなどが妊娠能力を改善すると言う根拠はほとんど示されていません。これらが、産み分けに有効と言う事実もありません

 海産物の摂取:海産物の摂取量が多くなると、そこに含まれている水銀も多く摂取することになります。その結果、血中の水銀レベルの上昇の恐れがあります。血中水銀の上昇は不妊と相関すると報告されており、過剰な摂取は避けた方が良いです。

葉酸について:葉酸不足は、無脳児のリスクを高めることが知られています。妊娠を望む女性には、妊娠前から葉酸を少なくても1日400μgを摂取することが勧められています。

喫煙とアルコールの妊娠への影響について

喫煙の影響:女性の喫煙は、不妊の割合を60%増にさせます。男性においては精子密度と運動性は低下すると報告されていますが、不妊割合を増加させるというデータは、示されていません。また喫煙は流産のリスクを高めることが、自然妊娠および体外受精の妊娠例において確認されています。それ以外にも、喫煙女性では1~4年閉経が早まると報告されており、喫煙は卵胞の消失を促進させるのではないかと考えられています(すなはちタバコは老化物質と言う事)。

 アルコールの影響:女性の場合、1日2杯のアルコールの摂取では不妊の割合を60%増にさせます。1日1杯未満の飲酒であれば不妊の割合は逆に35%低下します。アルコール1杯に含まれるエタノールは10gです。ワインに関しては、妊娠までに要する期間が短縮し、むしろ妊娠を促進するという報告もあります。男性に関しては、飲酒は精液所見にはネガティブな影響を与えないと報告されています。妊娠中のアルコール摂取は胎児発育などにも影響を与えることから飲酒は控えるべきであるのは、当然です

カフェインについて

不妊への影響:女性の場合、カフェインの摂取量が1日5杯以上のコーヒーに相当する500mgを摂取した場合、不妊の割合が45%増加します。男性の場合は、カフェインの摂取で、精液状態が悪化することはありません。妊娠への影響:1日2-3杯以上のコーヒー摂取は、流産のリスクを上昇させる可能性があります。しかし先天奇形のリスクには影響を与えないと報告されています。またコーヒー1-2杯は、不妊の割合も増やさないし、妊娠への影響もありません

 その他の汚染物質など

マリファナ:女性の場合、不妊の割合が70%増加しますが、男性の精液状況には影響がありません

 サウナ:女性の場合、不妊に影響もないし、妊娠中も特に流早産への影響もありません。男性への影響(睾丸の温度上昇)も懸念されますが、敢えて、妊娠のために避けるほどでは無いとのことです

 化学物質など:ドライクリーニングや印刷工場の溶媒は女性の出産率の低下を引き起こします。重金属は、男性の精液状態を悪化させます。

 今回紹介している論文のまとめと勧告です

まとめ

●fertile window(妊娠可能期間)は、排卵日を含め手前6日間です。頸管粘液量や頸管粘液の性状(分泌物が多くて、粘性が少ない時期に妊娠率は高い)と相関する。

 ●fertile windowにおける連日あるいは隔日の性交渉は妊娠率を高める。また1週間に2~3回の性交渉でも、ほぼ同様な結果が得られる。

 ●性交渉のタイミングや性交時の体位あるいは仰臥位で安静を保つ時間などは妊娠率には影響を与えない。

 ●排卵日を予測するための装置は性交回数の少ないカップルには有用であると思われる。

 ●1日1~2杯のアルコール摂取あるいは、中等度のカフェインの摂取は妊娠率にネガティブな影響を与える可能性がある。

 勧告

●妊娠成立までの期間は加齢とともに上昇する。35歳を超える女性においては6か月を超えても妊娠しない場合には、専門医受診が勧められる

 ●正順な月経周期が規則正しい女性においてはfertile windowの前に連日あるいは2日ごとの性交渉することを勧める

 ●喫煙、1日2杯以上のアルコール摂取、不法薬物(マリファナなど)および大部分の腟潤滑剤は妊娠を試みるカップルには勧められない。